法律を少しでも勉強した経験のある方なら、借金に時効が存在することはご存知かと思われます。これを『借金の消滅時効』と言い、お金を貸す側である消費者金融の方々は、当然のことながらその存在を知っております。ですから消滅時効が完成している場合は、借金の請求はしてこないように思えます。ところが普通に請求してくるのです。それどころか裁判をおこしてくることもあるのです。
その理由としては、法律を勉強したことのない一般の方々は『消滅時効の制度』を知らないだろうと請求をしてくるのです。請求された債務者の方が僅かでもお金を返済したり、支払い猶予の申し出をしてしまえば、その時点で消滅時効が中断してしまいます。消費者金融の方々は、そこに期待をかけて請求をしてくるのです。
また仮に裁判になって消費者金融側が勝訴してしまうと、消滅時効が中断してしまうだけでなく、給料や預金の差し押さえもされてしまいます。消滅時効が完成しているとお考えであれば、裁判の場では必ず「消滅時効を援用します」と裁判官に伝えるか、「消滅時効を援用する」といった内容の文書を裁判所に提出してください。そうすれば裁判で『消滅時効の援用』の効果が発生します。
裁判の場で消滅時効が完成していた場合、消費者金融側は下記のような行動を起こします。
- 訴えを取り下げる
- 請求の放棄をする
ここで注意したいのが2つの違いです。“訴えの取り下げ”も“請求の放棄”も、裁判が終わるという点では共通しております。しかし裁判が終わった後の効果はまるで異なってくるのです。
○訴えの取り下げ
裁判が最初から起こされていなかった事になる。
※せっかく裁判の場で主張した『消滅時効の援用』の効果がなくなってしまいます。言い換えますと、もう一度消費者金融側は同じ内容の裁判を起こすことができてしまうのです。
○請求の放棄
消費者金融側が裁判に負けた事が確定。
※『確定』という言葉通り、蒸し返して同じ裁判を起こすことができなくなります。
消費者金融側にとって訴えの取下げのほうが明らかに有利です。もっとも、もう一度裁判を起こされた場合、当事者が同じであれば再度消滅時効を援用して全く同じような結末となる可能性が高いでしょう。しかし以前に裁判を起こされた方の“相続人など”の場合には、『消滅時効の知識』がなければ負けてしまう可能性もあるのです。将来の蒸し返しの禍根を断つという意味では、明らかに請求の放棄によって訴訟を終わらせた方が良いでしょう。
請求の放棄を選択する方法ですが、訴えの取り下げを拒否することです。訴えの取り下げには被告の同意が必要となります。ここで訴えの取り下げに同意をしなければ、請求の放棄をしてくるかそのまま消費者金融側に敗訴の判決が下される事となります。しかし訴えの取り下げに同意しないのは裁判の知識・経験が無い方には相当の勇気がいります。なぜなら、せっかく消費者金融側が訴えを取り下げて裁判がなかった事になる展開になりそうなのに、その提案を蹴るわけですから。
なお借金の消滅時効の裁判で、債務者の代理人として司法書士や弁護士などの専門家が対応した場合、消費者金融側は初めから請求の放棄をしてくる可能性が高いと言えます。専門家は訴えの取り下げに同意しないとわかっているからだと思われます。