建物には幾つかの登記制度が存在します。日本の不動産登記制度は、国民の財産権を保護し、取引の安全を確保するために重要な役割を果たしています。ここでは、代表的な所有権保存登記・建物表題登記・建物滅失登記についてご説明いたします。
1. 建物表題登記
建物表題登記とは、新築や増築などによって初めて登記される建物について、その存在や構造などの物理的情報を登記簿に登録する手続きです。この登記は不動産登記法に基づき、建物の完成後1か月以内に所有者が申請する義務があります。
登記内容としては、以下のような情報が記載されます。
・建物の所在
・家屋番号
・種類(居宅・店舗・倉庫など)
・構造(木造・鉄骨造など)
・床面積
・所有者の氏名、住所
この登記により建物の所在と存在及び所有者が登記上明確となります。なお、この表題登記がなされていないと、後に続く所有権保存登記を行うことができないため、非常に重要な登記手続きと言えます。
※この登記の専門家は土地家屋調査士です。
2. 建物所有権保存登記
所有権保存登記とは、登記簿にまだ所有権が記載されていない建物について、登記簿の甲区という欄に初めて所有者として名前を登記簿に登録する手続きです。1の建物表題登記の後に行う手続きで、所有者が第三者に対して自分の権利を主張(対抗)できるようになります。
この登記により、いわゆる「権利書(登記識別情報通知)」が発行されます。
そのため、銀行で住宅ローンを組む場合には、ローンの担保として抵当権を設定する前提として、所有権保存登記を求められることになります。登記される内容は、所有者の住所と氏名です。
※この登記の専門家は司法書士です。
3. 建物滅失登記
建物滅失登記は、建物が取り壊されたり災害などで物理的に消失した場合に、法務局の登記簿からその建物の記録を抹消する手続きです。建物の存在や所有者を登記する建物表題登記と所有権保存登記とは真逆の登記となります。
「建物の記録を消す登記に何の意味があるのか?」と疑問に思われるかもしれません。しかし、物理的に建物の存在が無くなっていても建物の登記の記録が残っていると固定資産税の課税対象となってしまう可能性があります。
また、土地の売却の際に建物を取壊し更地にしても、土地上に建物の登記が残ったままだと土地を購入した新所有者が建物を新たに建てる際に建築確認の手続きなどで支障が生じてしまう可能性があります。他にも、存在しない建物が登記されたままだと土地を相続した相続人が困惑してしまうというデメリットもあります。
したがって建物を取壊した際に建物滅失登記を行うことは非常に重要といえます。
※この登記の専門家は土地家屋調査士です。