不動産売買では何千万円、時には億単位の資金が動くため、買主・売主はそれぞれ不動産取引において自己の利益が確保されるのかどうかを最重要視します。具体的には、買主は「不動産の所有権の名義が移転すること」、売主は「売却代金を受領すること」が、絶対的な売買契約の条件となります。
上記のような買主と売主の絶対的な要望を実現するために、不動産売買において司法書士はどのような役割を果たすのでしょうか。前提として、司法書士は「買主」「売主」のどちらかの味方ではありません。中立的な立場で「買主」「売主」双方の利益保護の実現のために注力します。そうでなければ、取引の安全を守ることができないからです。
そのため、登記に必要な情報・書類を確認する際も、双方にとって取引が安全に成立するかを基準に判断します。ただし、中立の立場とはいえ、司法書士が行う権利関係の精査は、売主側にウエイトが置かれるのが通常です。なぜなら、売買の対象となる不動産を所有しているのは売主だからです。
そこで、売主が真の所有者なのか、また真の所有者であっても不動産を売却できる状態にあるのかを確認するため、次のチェックを行います。
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本人確認
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登記名義との一致
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登記名義人の住所が現住所と一致しているか
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印鑑証明書と実印の照合、および印鑑証明書の有効期限・住所氏名の確認
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権利証・登記識別情報の確認
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抵当権や差押えの有無
上記の要件をクリアしていることを確認したうえで、司法書士は買主が売主の口座へ入金することを承諾します(これを「実行」といいます)。買主から売主の口座への振込みは、振込金額が多額であるため、入金に時間がかかる傾向にあります。そのため、司法書士は売主の口座への入金が確認できたことを確認してから、登記の申請を行います。
このように、司法書士が売主の不動産の権利関係の確認と、買主から売主への入金確認の双方を厳重に行うことで、不動産売買の取引の安全が確保されるのです。




















