現在の日本は高齢化社会が急激に進行しています。そのため高齢となり判断能力が低下した高齢者の財産の凍結防止や、財産を保護するための制度のニーズが急速に高まっています。そういった状況の中で、家族信託という制度が少しずつ周知されてきている印象をうけます。当事務所への家族信託の問い合わせも4、5年前と比較して増加しております。
家族信託用の口座が作成できない金融機関も
家族信託制度は2007年9月に施行された改正信託法によって活用されはじめた新しい制度です。そのため銀行などの金融機関では家族信託に対する理解がまだ十分とはいえない状況です。家族信託において非常に重要な役割を占める家族信託用の口座の作成を認めていない金融機関が多数存在します。また仮に家族信託用の口座の開設ができる銀行でも預金額によっては口座開設が認められなかったり、家族信託用の口座の開設に手数料として数万円の費用が必要となる金融機関も存在します。
家族信託の口座が作成できなかった場合は
家族信託の口座は不動産を売却した代金や、賃貸物件の賃料の振込先にするのに使用する口座となります。信託口座の名義は税金上の問題や、他の親族から金銭の流れについて問い合わせに対応しやすくするためにも、家族信託用の口座であることが客観的に明確であることが望ましいです。しかし上記のように家族信託用の口座を作りづらい現状です。
そこで家族信託の契約書において金銭等を管理する口座を指定します。その指定する口座は受託者(預金等を管理する人)の個人の名義となります。本当は家族信託用の口座として「山田〇吉信託受託者山田〇男」のように記載できたらベストですが、信託口座が作成できない場合は受託者の「山田〇男」個人の口座を契約書に記載することとなります。そうすることで受託者山田〇男の口座が家族信託の用途のために使用されている口座と特定することができるのです。受託者である山田〇男は家族信託の業務における金銭の管理をこの個人口座で行う事となります。
ここで委託者(預金などの管理を任せる人)の通帳をそのまま預って、信託用の口座にすれば良いのでは?と疑問に思う方がいるかと思われます。しかし民事信託では形式的とはいえ信託契約に記載した財産は受託者から委託者に移転することになります。しかし通帳は法律で譲渡することが禁止されています。従って委託者の口座を信託用の口座にすることはできないと考えて結構です。