統合失調症という病気
統合失調症という病気を誰もが一度は耳にしたことがあるかと思います。一昔前(2002年頃)までは分裂病などと呼ばれていた病気です。症状としては幻覚や強い被害妄想によって思考や感情がまとまりにくくなり不安定になるようです。日本で把握されている患者数は70万人と統計が出されています。しかし実際の患者数はもっと存在している可能性が高いようです。なぜなら統合失調症を発症しても治療を受けない方が大勢いるからです。
その理由としては客観的に統合失調症の症状が現れても、当の本人にその自覚が無いからです。統合失調症の症状が現れた人に対し、「あなたは統合失調症だから、病院で治療を受けた方がいいよ」と指摘しても、何を言っているんだと指摘した人がおかしいと思われてしまうのでしょう。確かにその気持ちは分からなくはないです。統合失調症は30代~40代で発症する例が多いようですが、それまでは正常に社会生活を送っていた人達です。そういった人達に精神科への通院を進めても拒否するのはごく自然な感情です。そのため治療をしない方が多数いて、実際には人口の100人に1人くらいの割合で統合失調症の方が存在するのではないかと言われています。
後見業務との関係性
司法書士の私がなぜ統合失調症の話をするのかと申しますと、実際に司法書士の業務である、不動産登記、後見業務、裁判業務で統合失調症の方に関わった経験があるからです。40代の方の保佐開始の申立てをしようと家庭裁判所に打合せの電話をしたところ、「40代で保佐開始の申立てということは、統合失調症の方ですね」とすぐに病症を言い当てられたことがありました。これは家裁に統合失調症の方の後見関連の申立てが珍しくないという事でしょう。
アパートの大家さんからの悲痛な依頼
隣室から異臭
「隣室から異臭がする。なんとかしてほしい」と賃借人から苦情がきたため、対象の部屋を幾度か訪れたそうです。ある日やむを得ずスペアキーでドアを開けたところ、ペットボトル、雑誌、コンビニ弁当の空の容器などで部屋が埋まっていたようです。その高さは天井の照明に届こうかという高さで、生ゴミらしきものも一部混ざっていたため異臭が発生していたのでしょう。なんとかしたいが賃借人と連絡がとれないため、当事務所へご相談いただいたようです。
賃借人の許可なく撤去できない?!
ゴミと言えども、賃借人の許可なく撤去するのは不法行為にあたってしまう可能性があります。ところが肝心のゴミ屋敷にした賃借人とは全く連絡がとれません。そこで訴訟に踏み切る事にしました。もっとも訴訟と並行して私は本人と連絡をとる事を継続しました。裁判にならない方が時間的にも経済的にも原告・被告にとっては負担が少ないからです。手紙を出し携帯電話に留守電をいれ、保証人の親族からも連絡をいただけるようにお願いし、どうにか本人とコンタクトをとることができました。
その後、賃借人にご承諾いただき、本人の立ち会いのもと室内のゴミを撤去しました。重さは3トンを超えていました。(ゴミ処理廃棄場で処理の料金を計算するため重さを計ります。)
ゴミの量でも驚いたのですが、さらに驚かされたのが、賃借人は会社には普通に出勤し給料を毎月貰っているという事実です。賃料の滞納が無いのは、保証人の親族が立て替えて毎月支払っているからだと私は思いこんでおりました。なぜなら、あの山のように積み上がったゴミの中ではまともな日常生活など送れず、仕事もとうの昔に退職をしていると考えていたからです。しかし賃料は賃借人が毎月入金をしていたのです。そのためゴミ屋敷の状態の発覚が遅れて現在に至ってしまったのでしょう。
統合失調症の可能性
賃借人の方は、会話に一貫性が無く、「いつも後ろから、誰かが監視している」といった言動がありました。ボロボロの衣服、大量にゴミをため込む行動などを加味すると、司法書士会の研修や後見関連の業務経験で得た予備知識から、統合失調症の可能性が高いなという印象を受けました。親族の方も同じように感じていたらしく、本人を説得して病院での治療が継続できる体制を整えたようです。
ゴミ屋敷問題は他人事ではないのかも
ゴミ屋敷の原因は、統合失調症だけではなく認知症によるものもあるようです。ゴミ屋敷の問題を解決するためには、裁判所による強制執行の他に、賃借人と粘り強く連絡をとるなどの手段もあります。また親族の助けを借りて本人に治療を受けてもらい、部屋を正常に利用してもらう事も不可能ではありません。当事務所では微力ながら後見業務などの経験も生かしてゴミ屋敷の問題を解決するサポートをさせていただく事が可能です。