成年後見等の申立てについて
成年後見制度とは、何らかの理由により判断能力が衰えた方を支援、保護する制度です。具体的には、家庭裁判所の審判によって選任された後見人の方が判断能力が衰えてしまった方の財産を管理し、生活に必要な手続きなどを代って行います。人間を「判断能力が衰えた」と、外見から認識するのは容易ではありません。一見、判断能力に何ら問題も無いように見える方も大勢いるからです。実際は判断能力がかなり低下していても、明確な発声で意思表示をする方も珍しくありません。そういった方々と取引した相手方の中には取引相手が認知症だと気付かないこともあるのではないでしょうか。
しかしそこを逆手にとり相手方の判断能力の低下を知らないふりをして、高齢者や、知的障害者の方をターゲットとし必要のないリフォームや、高級な商品を購入させたり、不動産の所有権を相場よりはるかに安い値で移転させたりする悪質な業者が存在するのです。
上記のような悪質な業者から判断能力が衰えた人を守る必要があります。それが後見制度なのです。後見の審判がなされると後見の登記がされます。後見の登記がされている方が締結した契約は、後見人によって取消しが可能となるのです。
補助人について
補助人はご本人様の判断能力が不十分な方に対して選任の申立てができます。不十分といっても実際は一般的な判断能力がほぼ残っている方もおられるようです。その為か、補助人には代理権、同意権などの重大な権限は当然にはなく、申し立てによって、はじめて付与されます。補助人の申し立てはご本人様の同意がないとできません。
成年後見人について
成年後見人はご本人様の判断能力が、ほとんどなくなってしまった方に対して選任の申立てができます。認知症の方などが該当いたします。被成年後見人の方と締結した契約は、日常品の購入などを除き、取消す事が可能ございます。補助人と保佐人との決定的な違いは、ご本人様の行為を同意するといった概念が存在しません。ご本人様に対して効力が生じる契約の締結を、ご本人様に代って行う権限が与えられています(ただしご本人様が居住なさっている不動産の売却は家庭裁判所の許可が必要)。成年後見開始の申立てについては、ご本人様の同意は必要ありません。
任意後見契約について
任意後見人とは、ご本人様の判断能力が十分なうちに判断能力が衰えた時に備えて、ご本人様がご希望する信頼できる方に財産の管理を委任する契約のことです。この契約は公正証書にしなければ効力が生じません。また効力の発生は任意後見監督人が就任した時に発生します。
上記に様々な形態の後見人を挙げましたが、いずれの後見人もご家族の方が就任されることは可能でございます(ただし、就任者が病弱だったり、遠方に住んでいるなどの事情がある場合は、第3者が選任される事もあるので、ご注意下さい)。ここで気をつけていただきたいのが、ご家族の方が後見人に就任なされる場合です。後見人に就任すれば被後見人のご家族の方の財産を管理する立場になる訳ですが、軽い気持ちでお金を使い込んでしまったり、後で返すから問題ないと被後見人の方の預金などを流用してしまった場合、業務上横領罪(法定刑が最高で10年です)が成立してしまいます。
昨今では弁護士による横領事件が取り沙汰されていますが、後見人の横領事件は、配偶者、お子様などの親族後見人の方が横領行為を行う事件の方が、司法書士、弁護士などの専門職による横領事件よりも、圧倒的に多数を占めております。そして実刑判決を言い渡された事件もございます。刑法に規定されている、親族間の窃盗が免除される規定(刑法244条)が後見人には適用されないからです。後見人という職についた人間として、司法書士、弁護士等の専門職が横領した場合と同等の扱いがされてしまうのです。ご家族の後見人に就任された方はその点について細心の注意を心掛け下さいませ。
費用について
補助・補佐・成年後見の申立て
いずれも132,000円(税込)
■実費
・家庭裁判所への申立費用:800円
・登記費用:2,600円
・郵便切手代:4,300円
・鑑定費用(※必要がない場合もあります)
50,000~100,000円
・住民票:300円
・戸籍謄本450円
・診断書作成費用
5,000~20,000円