人が亡くなると相続が発生しますが、その原因が病気や事故でない限り、年齢は高齢であるのが一般的です。特に最近では亡くなった方だけではなく、相続人である子供や兄弟も、70歳以上の高齢者である事も珍しくなくなってきております。そうなると高齢や認知症などにより、十分な判断能力がない相続人が、遺産分割協議に参加する事が出来ないというケースが出てくるのです。こういったケースでは合法的に遺産分割協議を行うために、家庭裁判所に成年後見人選任の申し立てをする必要がございます。家庭裁判所に選任された成年後見人が十分な判断能力のない相続人を代理して遺産分割協議を行うからです。
ここで問題なのは「誰が成年後見人になるの?」という事です。誰が成年後見人に就任するかによって、その後の手続きに違いが出てきます。
相続人の他の相続人(共同相続人)が就任するケース
自らが相続人でありながら、同じ遺産分割協議に関わる他の相続人の成年後見人となった場合、利害関係が生じるため、成年後見人として協議に参加することが出来ません。例えば、成年後見人の立場を利用して自己の持分を多くするような遺産分割協議をする可能性があるからです。ですから、以下のいずれかの方法をとる必要があります。
① 後見監督人を選任する
後見監督人とは読んで字のごとく成年後見人を監督する立場の人間です。この後見監督人が上記の場合では、成年後見人に代わって遺産分割協議に参加します。ただし、後見監督人が一度就任すると、成年被後見人が亡くなるまで後見監督人の業務が継続されます。当然後見監督人に対し毎年報酬を支払う必要があります。相続財産の額が多くない場合には後見監督人を選任するのは向かないでしょう。
② 特別代理人を選任する
特別代理人も後見監督人と同様に、成年後見人に代わって遺産分割協議に参加する職務です。しかし大きな違いは後見監督人と異なり、遺産分割協議が終了すれば、特別代理人の業務も終了します。報酬も遺産分割協議の報酬を支払えば良いのです。一概には言えないのですが報酬は5万~10万円ほどです。
相続人以外の第三者が就任するケース
弁護士・司法書士などの法律の専門家が就任する場合がほとんどです。成年後見人に就任する候補者がご家族にいない場合や、仕事などで忙しい方が良く選択されている方法です。弁護士・司法書士が成年後見人に就任した場合、一度成年後見人に選任されると、成年被後見人がお亡くなりになるまで、職務が継続されます。それにともない報酬が毎年発生いたしますが、後見監督人や特別代理人を探す必要もなく、ご自身の現在のライフスタイルに支障をきたすこともございません。
最後に専門家の立場から、成年後見関連の申立てについて、強くお願いしたいことがございます。成年後見人は、ご家族の就任を含め、体調不良などの特別な事情が無い限り辞任する事は認められておりません。ですから、慎重に就任者を選ぶ為に、事前に必ず専門家に相談して欲しいのです。家庭裁判所の窓口でもご相談いただけますし、司法書士・弁護士の無料相談も継続的に行われております。疑問を残すような形で成年後見の申立てをすれば、申立て後に後悔が生じる可能性が極めて高いのが成年後見人です。
家庭裁判所へ相談に行く前の、事前相談でも構いません。まずはあなたの疑問をお聞かせください。